Webサイトの制作について調べていると、「ヘッドレスCMS」という言葉を見かけることがあります。「WordPressとは何が違うの?」「新しい仕組みなら、乗り換えた方がよいの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
ヘッドレスCMSを理解するポイントは、記事や画像などを管理する仕組みと、読者に見せる画面を作る仕組みを分けることです。
この記事では、ヘッドレスCMSの基本的な仕組みから、WordPressとの違い、代表的な製品・サービス、導入を考える際の判断ポイントまで、具体例を交えて解説します。
- 1. ヘッドレスCMSとは?
- 1.1. CMSは、記事や画像などを管理する仕組み
- 1.2. 「ヘッドレス」は、読者向けの表示部分を切り離すこと
- 1.3. CMSとWebサイトをつなぐ「API」
- 2. WordPressとの違いは、内容の管理と表示をどこまで一体で行うか
- 2.1. 店舗情報をサイトとアプリで使う例
- 3. WordPressもヘッドレスCMSとして使える
- 4. ヘッドレスCMSの代表的な製品・サービス
- 5. ヘッドレスCMSを使うメリット
- 5.1. 同じ情報を複数のサイトやアプリで使いやすい
- 5.2. 表示側の技術やデザインを選びやすい
- 5.3. 編集と開発の役割を分けやすい
- 6. 導入前に知っておきたい注意点
- 6.1. CMSを用意するだけでは、サイトは完成しない
- 6.2. プレビューや検索なども、構成に合わせて用意する
- 6.3. 高速化や安全性は、実際の作り方に左右される
- 6.4. 費用は、CMSの料金だけで比較しない
- 7. 個人ブログなら、WordPressとヘッドレスCMSのどちらがよい?
- 8. まとめ
- 9. 参考リンク
ヘッドレスCMSとは?
CMSは、記事や画像などを管理する仕組み
CMSは「Content Management System」の略で、日本語では「コンテンツ管理システム」といいます。記事の文章や画像、商品情報などを、管理画面から登録・編集できる仕組みです。
WordPressもCMSの一つです。管理画面で記事を書いたり、画像をアップロードしたり、公開日時を設定したりする作業は、CMSの機能を使っています。
「ヘッドレス」は、読者向けの表示部分を切り離すこと
ヘッドレスCMSの「ヘッド」は、読者が見るWebサイトなどの表示部分を指します。この表示部分は、専門用語で「フロントエンド」と呼ばれます。
ヘッドレスCMSは、主にコンテンツの管理とデータの提供を担当します。読者向けのページは、別に用意したWebサイトやアプリが作ります。
ここでいうヘッドレスは、「記事を書く管理画面がない」という意味ではありません。 編集担当者が使う管理画面はあり、読者に見せる画面をCMSから独立させている、ということです。
CMSとWebサイトをつなぐ「API」
分かれているCMSとWebサイトをつなぐのが、「API」という仕組みです。APIは、別々のソフトウェアが情報をやり取りするための窓口だと考えると分かりやすいでしょう。
例えば、企業サイトに最新のお知らせを表示する場合、次のようなやり取りを行います。
- Webサイト側が、CMSに「最新のお知らせを5件ください」と要求する。
- CMSが、タイトル・本文・公開日・画像などのデータを返す。
- Webサイト側が、受け取ったデータを決められたデザインで表示する。
CMSは「どの情報を渡すか」を担当し、Webサイト側は「どう見せるか」を担当します。この役割分担が、ヘッドレスCMSの基本です。
なお、データを取得するタイミングはサイトの作り方によって異なります。読者がページを開くときに取得する方法も、あらかじめ取得してページを作っておく方法もあります。
WordPressとの違いは、内容の管理と表示をどこまで一体で行うか
通常のWordPressでは、記事の管理とWebページの表示を、一つの仕組みの中で行います。管理画面で書いた記事を、テーマが決められたレイアウトで表示する形です。
一方、ヘッドレスCMSを使う構成では、記事を管理するCMSと、それを表示するWebサイトやアプリを組み合わせます。
| 比較する点 | 通常のWordPress | ヘッドレスCMSを使う構成 |
|---|---|---|
| 記事や画像の管理 | WordPressの管理画面で行う | CMSの管理画面で行う |
| 読者向けのページ | 主にWordPressのテーマが作る | 別に用意した表示側の仕組みが作る |
| 内容と表示の連携 | WordPressの中で行う | APIを通じて行う |
| 見た目の変更 | テーマの設定やサイトエディターなどを使う | 表示側のコードや、用意された編集機能で行う |
| 機能の追加 | プラグインで追加できることが多い | CMSと表示側の両方を考えて実装・連携する |
| サイトの立ち上げ | テーマを利用して進めやすい | 表示側の準備とCMSとの接続が必要 |
ここでは、テーマでページを表示する一般的なWordPressの使い方と比較しています。後で説明するように、WordPressをヘッドレス構成で使うこともできます。
店舗情報をサイトとアプリで使う例
例えば、複数の飲食店を紹介するサービスを作るとします。
CMSに「店舗名」「住所」「営業時間」「写真」をそれぞれ登録しておけば、その情報をWebサイトにも、スマートフォンアプリにも渡せます。
Webサイトでは写真を大きく見せ、アプリでは現在地に近い店舗を一覧で表示する、といった使い分けができます。表示の仕方が違っても、元になる店舗情報は共通です。
営業時間が変わった場合も、元のデータを一か所で修正し、それぞれの表示先に反映する構成を作れます。ただし、実際に反映される時期は、データの再取得やキャッシュの設定によって変わります。
同じ情報を複数の場所で活用しながら、それぞれに合う画面を作れることが、ヘッドレスCMSの大きな特徴です。
WordPressもヘッドレスCMSとして使える
「WordPress」と「ヘッドレスCMS」は、完全に対立する分類ではありません。WordPressは製品の名前で、ヘッドレスはシステムの構成を表す考え方です。
WordPressには、標準で「REST API」というデータをやり取りする窓口があります。これを使うと、投稿や固定ページなどの情報を、別に開発したWebサイトやアプリから取得できます。
そのため、次のような役割分担も可能です。
- 記事を書く・保存する: WordPressが担当する。
- 記事のデータを渡す: WordPressのREST APIなどを使う。
- 読者向けの画面を作る: 別に開発したWebサイトが担当する。
この使い方を「ヘッドレスWordPress」と呼びます。慣れたWordPressの管理画面を使いながら、公開するサイトの作り方を変えられるのが特徴です。
ただし、テーマのデザインや、表示を追加するプラグインの機能が、別のWebサイトに自動で引き継がれるわけではありません。
例えば、テーマ独自の装飾に必要なCSSや、プラグインが動かすJavaScriptは、表示側でも用意する必要がある場合があります。SEO用の情報をWordPressで管理していても、公開ページの適切な場所に出力する処理は、表示側との連携を確認する必要があります。
WordPressをヘッドレス化する際は、「記事を取得できるか」に加えて、「見た目や必要な機能をどう再現するか」を考えることが大切です。
ヘッドレスCMSの代表的な製品・サービス
ヘッドレスCMSには、提供会社のクラウドを利用するサービスも、自分のサーバーに設置できるソフトウェアもあります。代表例を見てみましょう。
- microCMS: 日本製のクラウド型ヘッドレスCMS。日本語の管理画面やドキュメントが用意されている
- Contentful: 情報を項目ごとに管理し、Webサイトやアプリなどの複数の配信先で利用できるクラウド型サービス
- Strapi: オープンソースのヘッドレスCMS。自分のサーバーへの設置と、Strapi Cloudの利用を選べる
- Sanity: 情報を関連づけられるデータとして管理し、クラウド上のデータ基盤からAPIで取得・配信できるサービス
「クラウド型」は、提供会社が用意したインターネット上のサービスを利用する形です。CMSのサーバー管理の負担を減らせますが、公開するWebサイトの準備や管理は別途考える必要があります。
「オープンソース」は、プログラムのソースコードが公開され、ライセンスの条件に従って利用・変更できるものです。自分で設置する場合は、サーバーの運用やCMSの更新も担当します。
クラウドか自分で設置するかは「どこで運用するか」の違いで、ヘッドレスかどうかは「内容の管理と表示をどう分けるか」の違いです。
ヘッドレスCMSを使うメリット
同じ情報を複数のサイトやアプリで使いやすい
商品情報、店舗情報、イベント情報などを一か所で管理し、複数の配信先で共有する構成に向いています。
配信先ごとに同じ内容を手作業で登録する場面を減らせれば、更新の手間や、媒体ごとの情報の食い違いを抑えやすくなります。
表示側の技術やデザインを選びやすい
CMSと表示部分が分かれているため、表示側には用途に合った技術を選べます。例えば、Web制作のための開発ツールであるNext.jsやAstroなどと組み合わせる構成があります。
また、記事の管理方法を保ちながら、公開サイトの表示部分を作り直すこともできます。ただし、データの項目やAPIの仕様に合わせた連携は必要です。
編集と開発の役割を分けやすい
編集担当者はCMSで記事を更新し、開発担当者はWebサイトやアプリの表示を改善する、といった分担ができます。
WordPressでも役割分担はできますが、ヘッドレス構成では、システムの構造として管理と表示を分けられる点が特徴です。
導入前に知っておきたい注意点
CMSを用意するだけでは、サイトは完成しない
ヘッドレスCMSは、主に内容の管理と提供を担当します。読者が訪れるサイトについては、別に準備し、CMSにつなぐ必要があります。
テンプレートや連携ツールを使える場合もありますが、WordPressでテーマを選ぶときと同じ手順で完成するとは限りません。日々の記事更新を管理画面から行えても、最初の構築や表示機能の変更には、開発の知識が必要になることがあります。
プレビューや検索なども、構成に合わせて用意する
導入時には、記事を公開できることに加え、普段の運用に必要な機能も確認します。
- 公開前の記事を、実際のデザインでプレビューできるか。
- 記事の更新や予約公開が、いつ公開サイトに反映されるか。
- サイト内検索や問い合わせフォームをどう用意するか。
- ページのタイトルや説明文、SNSで共有する画像などをどう出力するか。
製品側に用意されている機能や、既存のサービスを利用できる場合もあります。すべてを一から作る必要があるわけではありませんが、CMSと表示側の連携を含めて確認することが大切です。
高速化や安全性は、実際の作り方に左右される
ヘッドレス構成では、ページをあらかじめ作成して配信するなど、高速化を図りやすい設計を選べます。しかし、画像が大きすぎたり、読み込むプログラムが多すぎたりすれば、表示は遅くなります。
安全性についても、CMSと公開サイトを分けるだけで対策が完了するわけではありません。管理画面の認証、APIで公開するデータの範囲、表示側のプログラムなど、それぞれに適切な管理が必要です。
「ヘッドレスだから必ず速い・安全」と判断せず、実際の構成と運用を確認しましょう。
費用は、CMSの料金だけで比較しない
費用を考える際は、CMSの利用料に加えて、サイトの開発費、公開先の利用料、保守や改修の費用も含めます。
無料プランやオープンソースのCMSを使う場合でも、開発や運用にかかる費用がなくなるわけではありません。また、クラウド型サービスでは、データ量やAPIの利用量などが料金・上限に関係することがあるため、各サービスの条件を確認します。
個人ブログなら、WordPressとヘッドレスCMSのどちらがよい?
記事を書くことを中心に、テーマで見た目を整え、プラグインで機能を追加したい場合は、通常のWordPressが扱いやすい選択肢です。特に、運営者自身が設定や更新を進めたい場合は、必要な作業を一つの管理画面に集めやすい利点があります。
一方で、Webサイトとアプリで同じ情報を使いたい場合や、独自の画面を開発・保守できる体制がある場合は、ヘッドレスCMSを検討する理由があります。
| 実現したいこと | 検討しやすい構成 |
|---|---|
| テーマを使い、記事の執筆や更新を中心に運営したい | 通常のWordPress |
| 既存のプラグインを使って機能を追加したい | 通常のWordPress |
| Webサイトとアプリで同じ情報を共有したい | ヘッドレスCMS、またはWordPressのAPIを利用した構成 |
| WordPressで記事を書きながら、公開画面を独自に開発したい | ヘッドレスWordPress |
| コンテンツ管理と表示側を、それぞれ独立して開発したい | ヘッドレス構成 |
この表は選び方の目安です。例えば、WordPressのサイトを通常どおり運営しながら、そのデータをAPI経由でアプリにも提供することは可能です。情報を共有するために、必ずサイト全体をヘッドレス化しなければならないわけではありません。
まとめ
ヘッドレスCMSは、記事や画像などを管理する仕組みと、読者向けの画面を作る仕組みを分けたCMSです。APIを通じてデータを渡すことで、一つの情報を複数のサイトやアプリで活用しやすくなります。
通常のWordPressは、内容の管理からページの表示までを一体で行えることが強みです。WordPress自体をヘッドレスCMSとして使うこともできますが、その場合は、表示側の開発や必要な機能の連携を考えます。
選ぶ際は、新しさだけで判断せず、「何を作りたいか」「どこに情報を届けたいか」「誰が開発・保守するか」を整理することが大切です。個人ブログで執筆や更新を中心に進めたいなら、通常のWordPressを使い続けることにも十分な理由があります。
